打倒!カラクイの戻り

お買い上げ後のお客さまから寄せられる最も多い「コマッタ」は、「カラクイがくるっとまわり、調絃できません・・・(ToT)」です。三線を買った後、これで時間を費やした方も多いのでは! さらに「緩いのかと思って力一杯巻いたら絃が切れた」「カラクイが折れた」ということも頻発している様子。これはイケナイ! 憧れの三線ライフが初日でつまづいてしまいます。
そこで「打倒!カラクイの戻り」として、あらゆる分析と対策をおこないました。まだ悩んでいる方はもちろん、これから三線を始めるお友達にも是非教えてくださいね!

~目次~

1 : カラクイ調整の現状
2 : カラクイの素材
3 : カラクイの巻き戻り対策
 ■絃の巻き方
 ■それでも巻き戻る方は。。。
4 : 自分でカラクイを削るには?
5 : 注意事項

【カラクイ調整の現状】

カラクイの巻き方にはコツがあり(詳細後述)、やり方が違いますと、すぐにクルっと戻ってしまいます。

「不良品ではないの?」と不安げなメールもよく頂きますが、そうではありません。

三線は500年も進化せずにきましたので、調絃などギターのように便利ではないのが現状です。

三線はもともとファジー(沖縄らしく?)な楽器なのでそれぞれの棹に合わせてカラクイの太さを調整する必要があります。
それでは、実際どのようにして、棹にあわせてカラクイを調整しているのでしょうか。

当店や一般的な職人の技法を紹介いたします。

まず、メーカーよりカラクイを仕入れる際には、

写真右のように未削りの太めの状態で受け取ります。
通常、このままでは太くて三線本体のカラクイの穴に入りません。

しかしだからと言ってメーカーで細く削ってしまうと、

三線によっては細すぎて穴がスカスカになることもあります。

そのため、現状では三線ごとにカラクイの太さを調節して削っています。

カラクイをある程度まで削り、ちょっと削っては棹に差し込んでみる、

という作業を繰り返してサイズを確認します。

太すぎると棹に差し込むことができず、逆に細すぎると巻き戻ってしまいます。

うまく合うようになりましたら、今度はキリのような細いドリルで、絃を通す穴を開けます。

そのような手順でカラクイをといで、棹にピッタリと合うようにカスタマイズしていきます。

当店で販売しております通常のカラクイ(いわゆる削られている状態)は

大体標準と思われる太さに削ってお渡ししております。


難しいのは「絃を通す穴をあける」という作業です。最新の注意を払っておこなう作業なので、専門店や職人など慣れた方でないと難しいでしょう。

しかし、全然出来ないというわけでもありません。

カラクイが動かぬようにしっかりと固定(万力などで)し、穴あけ作業を行えば案外スムーズに出来るかも?

また、穴の大きさに合わせて削るのはわりと簡単にできます。

「自分でやってみたい!」という方は、日用雑貨品店で手に入る棒ヤスリや、紙ヤスリなどでチャレンジしてみてください。
(※注:材木用のヤスリでなく、金属用のヤスリをお勧めします)


【カラクイの素材】

■黒檀(写真右端)
木の中では一番固いといわれる、ポピュラーな素材といえます。
■紫檀(写真真ん中)
黒檀ほど固くはないが、同素材の棹とおそろいで使うと高級感がでます。
■水牛(写真左端)
からくいの戻りに困ったら水牛といいたいところですが、棹が高級品でないと水牛の固さに負けてしまいます。削るときに動物臭がします。


【カラクイの戻り対策】

その1:絃の巻き方

では、実際に、絃はカラクイにどのように巻けばよいのでしょうか?実際にやってみましょう!

絃を全部ゆるめます。カラクイから絃がはずれないようにしましょう(はずれたら、カラクイの穴に絃を入れて戻します)。

※絃が全てはずれた状態で最初から取り付ける場合は、まず糸掛けに結びます。 糸掛けへの結び方はこちらを参照。

片方の手で絃を引っ張りながら、カラクイを回していきます。絃をしっかりと、強く巻きつけるようにします。

このとき、カラクイは、回しながら三線側へ押し込むようにしてください。そうすることで、カラクイも穴にしっかりはまるようになります。

ここが大事なポイントです。
絃を巻くときは、カラクイの根元側(太いほう)へ巻きます。すぐにゆるむ巻き方の特徴は、先の細いほうへ絃が巻かれている場合が多いです。

カラクイの根元に巻きつけるのですが、最後は、絃が歌口(カラクイの下にある、絃を通す溝のある白いもの)に対し垂直になるようにして巻き終わるようにしましょう(下の写真を参照)。

例えば左の写真の中絃の場合、カラクイの根元側へ巻きつけていき、そろそろ巻き終わるころになったら、巻きながら絃を真ん中まで寄せていきます。


【悪い例】×男絃が斜めになっている

写真を拡大しないとわかりにくいですが、中絃と女絃のように、歌口に垂直に、絃がまっすぐになるようにして巻き終わることが理想的です。男絃は、絃が歌口に対し斜めになっていますので、これは避けましょう。(写真をクリックして拡大するとよく分かります)

なぜ絃がまっすぐになるようにするかというと、斜めになると歌口のところで絃を痛めるからです。

【良い例】○男絃がまっすぐになっている。

☆カラクイを巻くときはこちらも参考にしてみてください。
「カラクイを巻くときの握り方」>>


それでも巻き戻る人は? 小道具を使用!

絃の巻き方もあっている、それでもカラクイが巻き戻ってしまうときは、チョークや松脂などをつかってみるのもおススメです♪

 それぞれカラクイにつけることである程度、戻りを防ぐ役目を果たしてくれます。

【チョーク】
チョークをもって、カラクイの先端(特に棹に触れる部分)にぬりましょう。これだけでOK。

松脂
カラクイにたっぷりつけます。固い机などに松脂を置いて固定し、そこにカラクイをこすりつけます。

これでかなり滑りにくくなったはずです!

※松脂は現在販売終了となっております。粉状の滑り止めパウダーを販売しておりますので、そちらをお使い下さい

粉上になった滑り止めパウダーはこちら↑↑↑

ここまで万全にカラクイ対策をおこなってもそれでも絃が巻き戻ってし まう、という方は・・・
もう一度、カラクイをチェックしてみましょう。
カラクイが太くて棹にちゃんとささってないということはないですか?

カラクイが削られすぎていませんか?

上でも書いたとおり、 カラクイを取り付けるときは、職人が棹の穴にあわせてけずり調整をしています。

棹の穴の大きさは1本1本微妙に異なるためそれに合うカラクイにするように削って調整することが必要なのです。

それが、削りすぎてしまうと、棹の穴より細くなりすぎて穴に少し隙間があったり、

棹の穴とあっていなくてぴったり締まらなくなるのです。

また逆にカラクイの削りが甘く、太すぎても奥まではいらず絃がすぐに戻ることもあります。

もちろん当店の三線は、カラクイも1本1本調整し、チェックも念入りに しているので、

三線本体を購入した場合のカラクイでそういうことはありませんが、

カラクイだけ予備に買った場合は合わないことがあります。

もしカラクイが太すぎる場合は、金属ヤスリなどで削るとうまく調整できると思います。

「カラクイは木だから木工用ヤスリ」と思いがちですが、カラクイは黒檀など堅い木を使っていますので、

木工用では歯がたちません。

逆にカラクイが細すぎる場合は?これは新しいカラクイに交換するしかありません。

もうひとつは慣れでしょうか。

最初は「カラクイが戻る~」とお困りのお客様も、しばらく格闘しているうちにコツをつかむようです。

それまでの辛抱で頑張ってくださいね。


【自分でカラクイを削るには?】

いよいよ自分でカラクイを削ることになった、という方のために。もう少し突っ込んで話をしてみます。

【カラクイ削り 中級編】
カラクイは棹のどこで留まっているか見てみましょう。

カラクイの先端のほうの穴でしょうか?根元側の穴の方でしょうか?

根元側の穴でつまって奥まで届かないものをやや見かけます。

そういう時は全体を削らず、根元側の部分をゆっくり削ります。
カラクイの先の方を穴にぴったりさせてしまうと折れやすくなりますので、

棹の入り口でぴったりするよう、気をつけましょう。

【カラクイ削り 上級編】
削るときにも気をつけることがあります。

それはねじの原理を使うことです。

熟練した職人はカラクイにぎざぎざをつけ、戻りを防止する方法を施し ます。

男弦と女弦は右に巻きますので、右ななめにぎざぎざを入れます。

中絃はその逆です。

ここまでやれば、他の三線仲間の間でも一目置かれるでしょう・・(?)

【カラクイ 穴あけ】
削りよりも難しいのが穴あけです。小さくて軽いので固定するのが難しいのですが、

万力などのしっかりと固定できるものがあればOK!

あとは雑貨店で売っている細いキリやドリルで穴をあけることが出来ます。

「そんなに言うなら、自分でカラクイを調整してみたい!」 と思った方。

える・おきなわでは穴なし、未削りのカラクイを販売してます。

未削りカラクイをご希望の方は、ご注文の際に「未削り」と指定してくださいね。


最後に、カラクイの調整ではないのですが、調絃にちなんだ注意事項。 三線を買ったばかりのお客さまで、「弾いているうちにどんどん調絃がずれてくる」という声をたまに聞きます。
これは、新しい絃は、まだ完全に伸びきっていないので、演奏中に伸びたりするためです。絃を新しく張ったら、こまめな調絃が必要です。絃は、伸びきるまでに時間がかかります。毎日練習して、約1週間で安定するといわれておりますが、普段の調弦の高さにも影響されます。本調子の調絃が、C-F-Cなら、約1週間で安定してきます。この高さより低いと、伸びきるまでにもう少し時間がかかります。

絃が自然に伸びきるまで待つのは大変なので、自分で絃を伸ばしてみるのも1つの方法です。絃を伸ばすには、カラクイに少し強めに巻きつけピーンと張っておくか、絃の下に中指・薬指を入れ、絃を持ち上げるようにし、同時に親指で押さえつけるようにして伸ばしていきます。三線の胴の方から棹に向かって、唄口まで伸ばしていってください。

←←←←←← 胴から棹(上)へ伸ばしてください。

絃を張り替えたばかりのときは、驚くほどよく伸びます。調絃がすぐに狂ってしまうのも納得(?)です。

いつまでたっても絃が安定しない原因として、「三線の保管方法」もあげられます。皆さんは、「うま」を倒すとき、どのようにしているでしょうか?
絃を緩めて、うまを倒していますか?それとも、絃は緩めずに、うまを倒していますか?

正解は・・・・ 「絃を緩めずにうまを倒す」です。

三線を弾かないときに絃を緩めてしまうと、新しく絃を張った状態に戻ってしまいます。したがって、いつまでたっても絃が安定せず、演奏中に調絃が狂ってしまうという事態になってしまうのです。 Cの高さの調絃では、絃が切れることはありせん。また強く張ったままにすると、棹が反ったりする、ということもありません。ただし、皮への負担をなくすため、うまを倒すことは忘れないでくださいね。特に、本張りの方は要注意です。

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